リールのドラグ設定
リールのドラグの設定方法については、実はあまり語られていません。各人各様に設定しているのが現状かと思われます。そもそもリールのドラグ力は各メーカーの「気分」で書いてある部分が大きく、実用ドラグ力を書くにしても、一体何(もしくは誰)を基準に実現可能なドラグ力としているのかわかりません。今回はそんなドラグについて解説してみたいと思います。


リールのドラグ設定はどのくらい?

リールのドラグは人間の力で限界まで締め込むと、力のある人の場合二度と戻らないところまで締め込むことができる。しかし、そこまで締め込んでもドラグ力4kgと書いてあるリールで4kg出ることは、私の知る範囲においてありえない。逃げ口上として理論値や最大ドラグ力などと書いてあるものもあるが、ともかく、書いてあるとおりの力が出ることは通常の使用状況ではないと考えた方がいい。そのため、バネばかりなどを用意して、自分でドラグを調整する必要がある。(ビッグフィッシュを検量するためにもバネばかりは持っておいた方がいいアイテムだ)

さて、バネばかりなどで調整するとして一体どれくらいのドラグ力が適正なのかだが、ラインの耐久力の4分の1が基本となる。12ポンドラインなら3ポンドが適正だ。計算が煩雑になるので、使用するラインの太さを4で割り、そこに400gを掛けた値をドラグ力にするといい。

12ポンド÷4=3×400g=1200g

という具合だ。実際にこのドラグ設定で釣りをしていれば、ラインブレイクで一番多い抜け切れ、つまり結び目での破断はほぼ起こらない(ナイロンに限る)。また、バスの口が切れる身切れもバスリールの範囲であればかなり防ぐことができる。またフッキングの際には瞬間的に魚とのファイト時の2倍ほどの負荷がかかるとされているが、この4分の1調整法ならば十分安全圏内となる。

ここまで読んでみて、ドラグ調整が面倒だと思った方は少なくないだろう。そこで、ドラグ調整の手間が大幅に簡略化する方法をお教えしようと思う。単純な話で、20ポンド以上のラインを使えばよい。最大ドラグ力4kgと書いてある製品を使う場合、20ポンドラインであれば約9kgまで耐えるのだから、理論上ラインブレイクは起こらない。結束強度はラインの強度の7〜8割といわれているが、それを加味しても十分に耐える。通常起こりえないが(ロッドやライン、ドラグによる衝撃の吸収があるため)、フッキング時にドラグ性能一杯の4kgの倍にあたる8kgがラインに掛かっても耐えるわけだ。このため、バス用リールで20ポンド以上のラインを使うのであれば、ドラグがこれ以上締まると戻せなくなるかもしれないと感じるところから、半回転から4分の1回転ほど戻すくらいでいい。

リールの限界値を超える魚に運良く巡りあったことがある人ならわかることだが、どんなに締め込んでも走る魚は走る。バスリールでランカーシーバスを掛けたり、80cmを超えるライギョを掛けた場合、瞬間的なパワーで一気にラインを引きずり出されてしまう。よく「ドラグを締め過ぎだ」といってあざける人間がいるが、思いっきり締めた状態だと切れるようなラインを使っている方が「オカシイ」と思う。そういう人はオープンウォーターでの釣りが中心だったり、ラインブレイク(によって魚の口に針を残す、魚が死んでしまう)を手柄のように語る人間だったりするので、耳を傾けない方が懸命ではないか。カバーゲームが多くなる釣りである以上、主導権は可能な限りこちらで持っておきたい。釣果のためにも、魚の命のためにも、ドラグを緩めていても簡単に切られるような糸は使わないことだ。

ちなみにここで述べているのはベイトリールに関してであり、スピニングリールの場合は異なる。一概にはいえないが、細い糸を上手く扱うことを主眼に置いた設計となっていることから、ドラグは緩めの5分の1設定で構わない。ベイトと違い、ファイト中にドラグを調整しやすく(繊細にドラグ調整が可能なものがある)、調整の際のバレやラインブレイクも起こりにくいためだ。

ドラグの管理について

ドラグの設定は必ず釣行時に行うようにし、釣行後はドラグを完全に緩めた状態にしておくのがベストだ。これはドラグのブレーキパッドが長く、強く圧着され続けるほどドラグが本来の性能を発揮できなくなるためだ。リールを長く使用したいのであれば、ドラグはその都度設定、釣行後は緩める習慣を身につけておこう。