スコーピオンXT ジャーキングロッド
ジャークベイト(ミノーやジャークワーム)を扱うためのロッドは、日本ではかなり限られます。そもそもジャーキングを念頭に置いたロッドどころか、ジャーキングの釣りについて真剣に語れる人物がどれだけいるのか。シーバスや青物のように、投げて巻きっぱなしの中、アクションをつけるのであれば飛距離さえ出れば後は硬さがあればいいということになりますが、バスにあってはそんな竿では困るわけです。今回はジャーキングロッドのジレンマと題しまして、物理的に両立しえないジャークベイトの悲哀について語ってみたいと思います。

ジャーキングロッドに求められる要素のジレンマ

ここではジャーキングとしましたが、トゥイッチングも含むものとします。さて、ジャーキングがどういうものかについてはこちらの記事をお読みいただくこととしまして、ジャーキングをする際に必要なロッドの要素について考えてみましょう。

ジャークベイト、ジャーキングロッドのジレンマ
まず、バスフィッシングである以上はキャスティング性能が必要ですね。正確なキャストのためには竿は短い方がいいわけですが、画像のようなボーマーロングA 14Aといった典型的な小型ジャークベイトを投げる場合、短い竿ですと上手く重さを乗せられず、即バックラッシュとなるわけです。そこで竿を長くするわけですが、こうなるとジャーキングが大変で腱鞘炎へ一直線。とても一日続けられません。すぐに辛くなってやめてしまうので、ミノーは釣れない、ジャーキングは要らないとなる。

また、竿を長くできないのであれば、柔らかくしてやろうという発想が出てくるのですが、竿に張りがなければジャーキングはできません。竿の調子もレギュラーよりファストの方がアクションという意味ではよく、特に連続ジャークのキレや、トゥイッチの際のキックバックを演出するには、竿がグニャグニャではいけないのです。ジャークベイトはラインのスラックで動きを抑制、コントロールするものなので、竿を振った後、ラインのテンションに竿が干渉してはならないのです。

竿は長くあってはならない、竿は柔らかくてあってはならない、竿はファストテーパーでなければならない。これに加えてキャスティングフィールと飛距離の問題が絡むわけで、何をどうしたって両立しようがないのです。

こうなると、ジレンマを前にして(妥協に妥協を重ねた)専用ロッドが必要となるのですが、日本人が大嫌いなショートロッドで、しかもジャーキング専用ロッドですからね。売れるわけがないのです。ロッドの商品説明を見ると「ミノーのジャーキングに〜」などと書いてあるのに、グリップエンドとリールシートまでの距離が240mm以上あったり(グリップが長いとシングルハンドキャストができないばかりか、ジャーキングで腱鞘炎になる)、7フィートを超えていたりと、開発者はミノーが嫌いなんだろうなと一目見てわかるような竿ばかり。こういう製品を見るたびに、私に開発させろ!!と思うわけですが、そんな力があるわけもなく。ともかく日本はミノーが大好きな割にはミノーを含むジャークベイトへの理解が乏しい、なんとも妙なねじれ状態なのです。

最適なジャーキングロッド、ミノーロッドとは

ジャーキングロッドに関して具体的な話をすれば、一般成人男性を基準にすると、長さは5フィート中盤〜後半。グリップはリールシートからグリップエンドまでで200mm以内。十分な張りとパワーを持ったファストテーパーで、20ポンド以上のラインを使うことを前提とした飛距離重視のガイドシステムでなければならない。

ラインが20ポンド以上というのは、ジャーキングは連続で竿をあおるので、瞬間的にラインが伸びてしまうため。試しに10ポンドラインと20ポンドラインでジャーキングをしてみればわかります。10ポンドの方は動きにキレがないと感じるはずです。これは、糸が細くなればなるほど加速度的に衝撃に対する糸の伸びが増すためです。

1本の輪ゴムですと簡単に伸びますが、2本、3本と重ねていくと、同じ負荷をかけても簡単には伸びなくなりますよね。そして、輪ゴムが伸びるのはある一定の力、つまり自身が耐えられなくなるだけの力がかかったときに急に伸びはじめるわけです。この急に伸びはじめる点が、細いラインですと早まりますから、ミノーのジャーキング程度で伸びてしまい、動きがちょっと変かな?と思ってしまうわけなんです。ミノーが飛ばないからと細いラインを使う人も多いので、もし各社がジャーキングロッドをつくっていただけるのでしたら、推奨ラインは16〜25ポンドとしていただきたいところです。

また、ガイドセッティングですが、小型プラグの感度重視という名目で極小ガイドが大量に並んでいる竿がありますが、残念ながらあれは意味がありません。ミノーの釣りは基本的にサイトフィッシングです。サイトといっても、魚の居場所を探してルアーを投入するのではなく、魚のバイトを目視で確認しての釣りという意味です。ミノーの釣りは小さなバイトが多く、ジャーキングによるラインのスラックもあるため、竿に出る当たりは3本釣って1本あるなし。これはガイドを小さくたくさん並べても、PEを使っても同じです。単に飛ばない竿になるだけですので、ジャーキング専用ロッドに極小ガイドは不要なんですね。

そんなわけで、現状手に入る範囲のジャーキングロッドは以下のようなものとなります。ぜひとも、究極のジャーキングロッド、ミノーロッドというものを開発してもらいたいものです。もしくは私に任せていただいてもいいですよ(小声)




トップ画像にも貼ってありますが、スコーピオンXTの15101F-2です。シマノの竿はどれも金属のような強靭さを持っており、一般的なルアーメーカーのパワー表記より明らかに強めです。パワー表記の1でもランカーシーバスや雷魚を仕留められる異常な強さがあり、実のところミノーのジャーキングにはもってこいですが、7g程度のルアーのキャスティングは慣れが必要となります。先に述べたジャーキングロッドのジレンマですね。