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ご存知(?)のとおり、私はワームの釣りはあまりいたしません。ワームなしで成立しない状況であれば致し方なしなのですが、極力しないように心掛けています。それは、釣り上げた瞬間にワームを吐き出す魚、肛門からワームが飛び出している魚をよく見かけ、魚の死因の上位に入っていると聞いたことがあるからにほかなりません。だからといってワームを非人道的だ、けしからんと頭ごなしにやることもいたしません。どちらともつかない姿勢でなんとも私らしくないのですが、かつて、日本に「ワーム」の釣りを広めた男もまた、同じように胸を痛めたそうでして、今回はそんな昔話をしてみたいと思います。

3歳児でも竿を持たせておけば釣れる。それがワーム

アメリカではホリデーアングラーのお父さんが、お母さんと子どもを連れてボートに乗っているという光景をよく目にするそうです。お母さんがサンドイッチの用意をし、お父さんがルアーを投げ、子どもはお父さんに投げてもらったスピニングタックルを我慢強く持っている。そんな光景です。お父さんが家族サービスのフリをして「これを持っていなさい」といって竿を子どもに渡してやる。それでも釣れてしまうのがワームなのです。

冒頭でもお話ししましたが、魚がワームを吐き出したり、体内に残したりしてしまっているということは大変に多い。死魚をいくらか見てきましたが、肛門からワームが出ていたということも多々あるわけです。これは、釣り人がしくじった(ラインブレイク)のほかに、廃棄等で湖底に沈んだワームを食べてしまっている場合が意外に多いのです。

アクションなどつけなくとも食べられてしまうワーム。ここまで普及したワームですが、このワームはどのようにして日本にやってきたのか知る人は極めて少数です。バスブーム以降のバサーにとっては、もはや歴史の彼方といっても差し支えないくらい過去の話となってしまっているので致し方ないことなのかもしれません。そこで、私自身伝え聞いた話ではありますが、日本におけるワームの歴史について述べてみたいと思います。


それはテツ西山からはじまった

テツ西山、西山徹氏は、知る人ぞ知る日本のルアーゲームの第一人者で、日本のバスゲームを拓いた人といってもいい方です。もう10年以上前に鬼籍に入られておりますので、ここ10年ではじめられた方はご存知ないのではないかと思います。

日本のバスゲームは村田基氏からはじまった、いやいや、ヒロ内藤氏からはじまった……という話もよく耳にしますが、まあ、大正時代に日本へバスを持ち込んだ赤星鉄馬氏以下の面々を除けば、バスゲームを世間に送り出したのはこの方ではないかと思うわけです。ヒロ内藤氏が師と慕い、アメリカの釣具業界に飛び込むきっかけをつくったのもこの方で、とにもかくにも偉大な先人だったわけです。下の名前を頭に持ってくる英語表記のブームを釣り人業界につくったのもテツ西山氏ではなかったかと思います。

さて、ワームのおはなしでしたね。ワームが日本にやってきたのは、70年代。西山氏がアメリカからその技術を持ち込んだといわれております。とある(大人向けの)バラエティ番組でワームの釣りを見せ、それがあまりにも釣れたことで爆発的に日本に広まった。当初はインチキ(エサを加工したものなのではないか)だと騒がれておりましたが、ソフトプラスチックのワームが消費者の手元に届くようになるにつれ、インチキではないと証明されていったわけです。当時、プラスチックがやわらかな動きをすることが理解できない人々にしてみれば、奇術か何かの類いにしか思えなかったのでしょうね。


テツ西山氏の苦悩

ワームの釣りは国内のバスゲームを大きく前進させました。それと同時に、多くの残留物を水系に残す結果となりました。ワームはプラグに比べれば安価で、細い糸を使うことも多く、安易に糸を切ったり、切れたワームを廃棄する事例が後を絶たなくなったのです。ワームは分解することがなく、食感がいいことから、魚が口にするとそのまま違和感なく飲み込んでしまいます。管理釣り場でワームが禁止されたり、一部メジャーレイクでも使用が厳禁となっているのは、単に釣果が異常に伸びるからではなく、水中への投棄、残留によって多くの死魚を出してしまうからなのです。

ほかにも、ワームを柔らかくする際に用いられる薬品には環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の疑いのあるものがあり、魚類のメス化や貝類のオス化の問題が指摘されております。十分な科学的検証が行われているわけではないという声もありますが、これが事実であればその水系の資源の枯渇が心配されます。雌雄のある動物は、どちらかだけになってはいけませんからね。また、事実でなかったとしても、水中にワームを残すことは好ましいとはいえません。たとえ生分解性プラスチックを採用していても、魚が飲み込んだらすぐに消化され、無害のまま排出されるわけではないのですから。

このような問題が浮き彫りになるにつれ、西山氏は自身が持ち込んだワームの釣りについて、大変に心を痛めていたと聞いております。私は氏の苦悩を考えると、安易に釣果を求めてワームに走れないわけです。このような経緯から、私は釣果を求めるなら、その水域にいるエサ(中国産の養殖活きエビなどは使わないでくださいね)を使います。

私はハードベイトがすばらしく、ワームの釣りは低俗だとも申しません。ましてや、エサ釣りはズルだなどというつもりもありません。自然の中で遊ばせてもらっている身として、釣りが仕事ではなく「遊び」である以上、自然に余計な負担を与えないようにしていきたい。いい人ぶってゴミを拾えといったり、ポイント稼ぎでワームは使わないといっているわけではないのです。テツ西山氏の苦悩がいかばかりのものか、同じ釣り人として察してあまりある。釣具店に並ぶワームや、雑誌で紹介されるワームを見るたび、「自分の責任で……」と思っておられたとしたらどうか。自分ならルアーマンを続けられるだろうか……。

みなさんもワームを手にするとき、一度ワームの歴史について思い出していただけたらと思います。それが、ワームを使う者としての責任だと私は考えます。

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