フェイバリットカラー/コンフィデントカラー
釣具屋さんに行ったり、カタログを開けば、多種多様なカラーが存在します。このカラーはこういう状況に強い、あのカラーはこういう状況に強い、この釣り場はワカサギ、あの釣り場はギル…そんな風に語られることが多いですよね。しかし、私にとってカラーとはルアーの魅力を高めるための補助的要素でしかありません。ではなぜ、さも一番大切なことのようにカラー理論が語られるのか。今回はそんなカラーに関する話題について語ってみたいと思います。

ルアーカラーの塗り分けに関しては、ロシア国旗とオランダ国旗を用いて以前説明しましたが、今回は塗り分けではなく、カラーというものがどういうものか、ローテーションにどの程度の効果があるのかという基本中の基本についてお話しします。こちらを先にやった方がよかったかもしれません。また、魚の目にどのように色が認識されているかはワームカラーの項目でお伝えした通り。以上を踏まえた上で本題に入ってみたいと思います。

ルアーにおけるカラーの要素は副次的

みなさんが何かを買う際、財布でも車でも、こちらの読者であれば釣具でも構いませんが、一番最初に「色(カラー)」ありきで商品を選ぶということがありえますでしょうか。もちろん、カラーの塗り分け理論、明滅理論等様々考慮の上、色ありきで探すことがまったくないとはいえませんが、通常の買い物で「黄色い何かが欲しい」ですとか、「赤ならなんでもいいから買う」ということはまずありえませんよね。

では、これが食事ならどうか。「何か食べたいな」「何を食べようかな」と思うことはあっても、これこれこういうものが食べたい!それ以外は嫌だ!ということは稀でしょう。毎日三食、絶対にコレしか食べない、他はいらない!と決め込んで食事をするということは通常、ありえませんよね。カラーへのこだわりというのは、妙な例ではありますが、こんなことをいっているのと同じなのです。

我々が何か食べようと街を散策している場合、定食屋が見えたので定食をいただくということや、家族が出してくれた料理を特にこだわりもなく食べるということが多いはずです。同じことが魚の世界でも起こる、と私は考えます。人間のように恵まれているわけではありませんから、俺はアユしか食わない!なんてことは人間以上に起こらないだろう。ということです。目の前にザリガニが出てくれば、特に考えもなくザリガニを食べるわけです。

カラーが副次的というのはこういうことで、アユカラーだから食って、ワカサギカラーは食わないという状況は極々稀な状況です。さらにこういった色へのこだわりは、ヒットルアーが絞り込めてから試行錯誤する段階です。その日の釣りをはじめた瞬間から、この色で釣れなかったら諦めよう……という釣り人が多く、それでは釣りの幅も狭いままで上達は望めません。

日本のアングラーが新たなステージに行くためにも、カラー信奉、マッチザベイト信奉が強い日本において、「カラーはそれほど重要じゃないよ」と常識破りの発言をする意義は大きい、と私は考えます。


私の中の優先順位を示すならば、カラーの要素は、

Aランク ルアーの水押し > 動き
Bランク 明滅(ブレードの輝きやルアーが消える等) > 音
Cランク 色 > 臭い(味)


であり、微細なカラーの違いはかなり優先順位的に低いものになります。私は魚の反応が悪い場合、カラーで悩むくらいなら、まったく動きの異なるルアーを投げて反応を見ます。色だけ変えても見切られている場合は反応することは「ほぼない」ためです。


マッチザベイトカラーとはいうものの

マッチザベイトカラーだから間違いない。そう考えることはおかしいことではありません。カラーに何らかの理論や軸足をもって工夫すること、自信を持つことは、自らの釣りを大きく進歩させていきます。ただし、その水域で食べているものをいつでも投げればいいというものではありません。

先ほども登場しましたが、みなさんが街の中を歩いていて「何か食べたいな」と思ったとします。その際、そこらじゅうにあるラーメン屋や牛丼チェーン店に吸い込まれることもあるでしょう。しかし、軒を連ねるチェーン店の中に、ひとつだけうなぎ屋さんがあったらどうでしょう。本格ステーキハウスがあったら……?「おっ」と思いませんか?この「おっ」という現象が魚の中でも起こると私は考えます。

自然界では、おかしな動きをするもの、周囲と違うものは長く生きられないのが原則です。色素欠乏症、いわゆるアルビノで真っ白な生き物は、仲間にいじめられて死んでしまったり、目立つため捕食対象になりやすいそうです。つまり、敢えて目立たせて気を引き、「あのエサは妙だな、食えそうだ」と思わせ、魚を釣るわけです。

ルアーはそもそも「妙なもの」です。人間がどんなにベイトを演出しても、明らかにエサではないものを見て、魚はそそくさと去って行きます。しかし、妙な色と妙な動き(エサとは思えない動き)が合わさった瞬間、それは「魅力的なターゲット」になる可能性を秘めているのです。

そのためにも、メインのベイトを確認することは無駄にはなりません。メインがワカサギならピンク系、アユならブルーバック系、ギルならチャート……という風に、なるべく反対色になるカラーを選んだり、同系色でもベイトより更に目立つものを選んだりすると釣果が伸びることが多いように感じます。ベイトをチェックすれば魚の居場所もわかりますし、戦略もたてられます。私はエサに似せたチマチマした釣りなんかするんじゃねえ!といっているわけではありません。お間違えのなきよう、お願いいたします。


カラーは「見せる」か「見せないか」で絞ることができる

カラーは見せるか見せないかでかなり絞ることができます。小アユ、アユ(オス)、アユ(メス)、大アユ……という風に、大量に揃えている人もいますが、そこまでこだわることもないでしょう。単純な話、水系の水の色や背景色にあわせていけばいいわけです。

私の場合チャートバックのルアーが多いのですが、背中がチャートでお腹をその水系の背景色や、水深にあわせた色に塗り替えてしまうというテクニックを使います。バスから見て、背中が見えた瞬間はハッキリと捉えられ、お腹を見せた瞬間に消えてしまう。そんな状況をつくるわけです。

ところがこういったルアーはとにかく少ない。背中がチャートでお腹がブラウンというカラーリングはアメリカンルアーには割と出てくるのですが、日本のルアーメーカーではとんと見かけませんよね。もちろんお腹がチャートで背中がブラウンやグリーンでもいいんですが、日本で一般的なものはファイアタイガーカラーくらいでしょうか。それでもアユやワカサギにくらべてあまり売れないようですが。

というわけで、背景等と同化して消える瞬間をつくることで魚に能動的に探させ、見つけた瞬間につい噛み付いてしまう状況を演出するのです。これはカラーにしかできない策略です。アクションでも音でも消える瞬間を演出することはほぼ不可能ですからね。カラーでしかできない強味を最大限に活かしましょう。

魚の好奇心を刺激する方法は食欲のない状況でも効果的で、食性以外の部分に作用するため、一度試されることをおすすめいたします。ちなみに私はナチュラル系のカラーは1〜2色、アピール系のカラーは3〜5色持っていくことが多く、アピール系は上記の背景に溶け込む色と、その水系のマッチザベイトから遠い色で占められています。皆さまも一度、これらの理論を駆使してルアーカラーの見直しをされてみてはいかがでしょうか。








レアリスクランクの8Aをもとにカラーセレクトをしてみました。チャート系、グリーンバックのファイヤータイガー系、そこにシルバーやゴースト系のナチュラルを加えます。これで多くの釣り場に対応することが可能です。もうひとつ付け加えるなら、ここにアカキンもしくはクロキン、最終兵器としてソリッドカラーの単色ボーンカラーを入れたりします。アカキン、クロキンは、どんな水域でも安定して見えますし、黒は当然背景と同化し、見えなくなります。また、赤も水深が深くなるにつれ、光量が少ない朝夕には黒に近くなり、同化する効果があります。ボーンカラーはトップ系で効果を発揮するカラーで、特に晴天、薄曇りの状況で空に同化して見えにくく、魚が探しにくる要素になります。クランクですと、アシ際でトップ的に使って引いてくる場合おもしろいカラーです。