ミノーでライギョ
フォールターンオーバーとはどういうものかを語る前に、少し述べておきたいことがあります。日本の釣り雑誌の程度の低さについてです。あそこで連載を持っている人間の多くが、残念ながら私より釣り歴の浅い人間ばかりになりました。結果としてフォールターンオーバーの話などでもそうなのですが、どこかの誰かに話半分で聞いただけの情報でものを書くようになってしまっているのです。ターンオーバーは春先にも起こる!ですとか、気温が4度違えば起こる、水温が4度下がれば起こるなどという、およそまともな理科教育を受けていないであろう人間が、皆さんの釣りを支配しようとしている。このことが大変に遺憾であり、イカンと思うわけです。
ギョッとしたわけですよ。水温が4度下がればターンオーバーが起きる!なんて書いてあって。あと、水深の浅い野池でも起こる(起こらないとはいいきれませんが)、全国どこでも当然のように何度も起こるかのように書かれているわけでして。どうも日本のバス釣りは、20年前より後退しているようです。

ターンオーバーは原則、10m以上の深さをもつか、冬期に凍結するような止水域で起こります。水は4度のときに最も重くなる性質をもつことから、秋にかけての時期に表水温と気温の差が15度(厳密には13度、顕著に現れるのは17度といわれています)程度になり、かつ表水温が冷やされて4度前後になった場合、普段起こらない対流が発生し、深場の水が表面に吹き上がってきてしまうのです。これの何が悪いのかというと、普段対流がないわけですから、底に沈んでいる水は水質が悪い。加えて深場は光が届かないために水草等も乏しく、溶存酸素量が足りない。魚たちにとっては天変地異のようなものです。

バスに限らずマス釣りなどでも渋くなると深場を狙う人というのがいますが、残念ながらそこに生物はいません。海と違って対流がないのですから、ディープエリアは死の世界なのです。夏は、冬は、ディープでメタルジグを〜と安易に紹介するプロや雑誌がありますが、海釣りじゃないんですから、30ft(約10m)以上のディープエリアで魚が釣れることは極めて稀です。アメリカでも30ft以上を攻めるプロはほぼいないと聞きます。これは、科学に裏打ちされたものです。それが20年前の常識でしたが、現代のバスフィッシャーマンが科学を否定し、未文明のオカルト理論を信奉しているのは実に嘆かわしいことです。

さて、ここで冷静に考えてみましょう。この条件を満たす水域が日本にいくつあるでしょうか。弱いターンオーバーはあったとしても、致命的に魚が釣れなくなるようなものは稀ではないか。最下層の沈殿物が巻き上がるような過激なターンオーバーが全域で起こる水域では、そもそも魚がまともに成長できない。アメリカのような広大な湖で、ターンオーバーが起きても退避可能な場所がない限り、その水域の生命体は死滅してしまうわけです。激烈なターンオーバーが毎年、何度も起こるなんてことが本当にあり得るのか。もうおわかりいただけたのではないでしょうか。

また、夏場は植物性プランクトンが優勢で、秋になると一気に動物性プランクトンが増加し湖の均衡が破られます。動物性プランクトンが増えれば、水質は改善方向に向かいますが、このプランクトンの交代の時期に問題になってくるのが、夏場の水生植物の腐敗、田畑からの薬剤、稲渋等の流入、生産物の投棄によって、ターンオーバーではない水質の悪化が起こり、これを「ターンオーバーだから今日はダメだわ」と勘違いしている例もあるわけです。ロッドで水をバシャバシャやってみてアワが消えなかったらターンオーバー?関東の水質は悪い(マッディ)なんですから、関西に比べればバシャバシャすればアワは消えませんけど、年中ターンオーバーということでよろしいですか?と。

結局、どこかの誰かがいったことを、真剣に、科学的に聞かずにやってきたから、20年前に劣る状況なわけですよ。雑誌なんかで記事を書いている連中が、ここ10年程度でやってきた人間で、その人たちに教わるしかないのですから、オカルトが蔓延することが一概に皆さまのせいだとは申しません。温故知新という言葉もございます。かつてルアーフィッシングを日本に広めた方たちの知識、文献に当たってみてもいいのではないでしょうか。

ターンオーバー時の釣り

さて、ターンオーバー時にどんな釣りをすればいいのかですが、とにかく食いません。もとい、食えない。例えるならば、半袖半ズボンでエベレストの頂上に投げ出されたような世界。酸素は薄く、頭はガンガン。寒いのはもちろん、死を覚悟する状態で、メシでも食うか…とはなりませんよね。

で、食わないからとワッキーリグ(ネコリグ)なんかを持ち出す人がいるわけですが、ますますダメです。あの手のルアーが釣れるのは、腹が空いるときと、目で見て食うときです。アメリカのバスプロも、フォールターンオーバー時はトップウォーターを使います。このほかには、シャロークランクやジャークベイト(ミノー)などで、水面付近で勝負をつけるリアクション系のルアーを好みます。水深が深くなるほど水質は悪くなり、酸素が減るわけで、酷い環境の中でもエサを追える魚は水面付近に集まります。それを条件反射を利用して拾っていく釣りを展開するわけです。

ルアーサイズは下げるのではなく、むしろ上げます。リトリーブスピードも上げる人がいます。渋いからと、スローなゲームをはじめると、それこそドツボなのがこの時期です。皆さまもご注意を。