13カルカッタ400ライン
キャスティングの基本は何か。こう聞けば多様な方法論が語られます。では、基本のキャストは何かと聞けばどうでしょう。わかっている方は、オーバーヘッドキャストだと答えるはずです。しかしこれは、キャストの基本がオーバーヘッドであることを知っているだけに過ぎません。なぜオーバーヘッドキャストが基本なのかを語ってくれといえば、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をされるのが常なのです。基本が何か知っていることと、理解し、できていることは違います。今回はキャストの基本について掘り下げていきたいと思います。

「基本のキャスティングがオーバーヘッドなのはなぜ?」と聞いたらば、「ナントカプロがそういっていたから」なんて答えが返ってくる。ここ10年、2000年以降バス釣りをはじめた方はそういうことになるのかもしれません。それ以前からはじめた方は「村田基さんがいっていたから」ということになるのでしょうか。かたや釣りのプロ、かたやキャスティング世界最高水準の男。同じことをいっているのですから、間違いではないのでしょう。

私はなにも、キャスティングの基本がフリップキャストだとか珍説を唱えて注目を集めたいわけではありません。私もキャスティングの基本はオーバーヘッドだと思います。ただ、「どこかの誰かがいったから」これが大層気に入らないんですね。ごめんなさいね、お気を悪くさせてしまいましたら謝ります。ですが、日本のルアーゲームの世界にはこういうものが多すぎるのです。いわれたこと、読んだことをそっくりそのままコピーできるならいいのですが、実際そんなことはあり得ないわけでして、技術を習得するには理解と練習が必要ですし、ルアーローテーションにしても、誰それがどこで何を使ったからこれを使うでは、いつまで経ってもケーススタディを積み重ねるばかりで、初見のフィールドや状況では初心者同然の釣りしかできないなんてことになるわけです。というわけで、基本の恐ろしさを視覚的に理解してもらうために、ちょっとした図を用意してみました。
ピラミッド図
基本的な知識というのは、ほんの少しです。他方、上級の知識となると、そのフィールドの特定状況下でのヒットルアーやローカルテクなど多種多様。それがあれば決定的な差を産み出すことができますが、汎用性はほとんどありません。基本というのはすぐに覚えられてしまうためにおろそかにされるものです。自動車教習所で左右に曲がる際は、後方から自転車やバイクが来ていないか巻き込み確認をしなさいといわれるのに、人はすぐに忘れて事故を起こします。車の免許を得、運転にも慣れ、教習所時代よりはるかに技術も経験も進歩しているのに、です。基本とは、それがなければそもそも成立しないからこそ、基本としてはじめに教えられるのです。

話を元に戻しましょうか。オーバーヘッドキャストがキャスティングの基本なのは、リリース位置が変わっても、ロッドがまっすぐ振れていれば絶対に左右に飛んでいかないからなのです。なあんだ、そんなことかと思ったあなた。なぜすぐに言葉にし、自信をもって伝えられなかったのでしょうか。それはやはり、知ってはいても理解し、習得しているとはいえない状態にある証拠なのです。

竿をまっすぐ振れば、まっすぐ飛ぶ。自明のことです。その際に、体の動く部分をすべて軸足の上に乗せておくことが大切です。投げる手の側の足を前に出し、その足のかかとの上に肘、つま先の上に手首(リール)がある状態でルアーを投げます。すると、前に出した軸足の方向にルアーが飛んでいくわけです。これを行おうとしますと、腕を振って投げることはできませんから、自然と脇は閉じられ、肘が体に触れた状態でキャストすることになります。肘が体に触れていれば安定度は格段に増しますから、よりまっすぐルアーが投げられるということになります。ルアーをまっすぐ飛ばす感覚が完全に自分のものになるには、以外と時間がかかります。ただ、コツさえ掴めば初心者が数日で中級者を名乗っている人よりずっと上手く投げるようになります。基本を大切にしない方は、経験を積んで前進している気になりますが、知識が増えるばかりで釣りに貢献する技量に変化はほとんどありません。一方で、まっすぐ投げられるようになった初心者は、なんかよくわかんないけど釣れたということが増えてきます。いいところに投げられるのですから当たり前のことです。ジャーキングがどうの、カラーがどうのと知識を得たところで、魚にアプローチできなければ釣れないわけですから、中級者があっという間に追い抜かれるということも多々あります。

バス釣りを初心者に勧める中級者がスピニングタックルを持たせ、根掛かりしにくいワームの釣りをさせているところをよく見ますが、私がキャストの基本はベイトで学びなさいというのは、飛ばないものを投げさせて妙なクセをつけるくらいなら、バックラッシュ上等で練習した方がずっと上手くなるからなのです。その際に投げさせるのは決まってトップウォーター(ザラ)かリップレスクランク(ブレードルアーやスピンテールジグ等も)です。前者はよく飛び、バックラッシュしても回収が容易で、後者は更によく飛び、感覚を掴みやすいためです。

これで皆さんもキャストの基本がオーバーヘッドである理由が理解できたことと思います。次は習得する段です。以前に同様の記事で練習法を書いておりますので、そちらも合わせてお読みいただければ幸いです。皆さんが基本を大切にされることを願っております。