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バス釣り歴が長い方…10年程度ではなく、30年を超える方の話。彼らはそれだけ重ねた
知識や技術のほかに、今ほど道具がよくなかった時代を生き抜いてきているわけで、そ
の中でどうしても磨かなければいけないものがありました。それが「キャスト」です。


もう15年ほど前になりますが、某釣具メーカーがキャスティングの上手いプロを育成
するという目的で、ファミコンの高橋名人のキャラバンよろしく、全国からキャスト
自慢を集めたことがあります。キャスティング大会を各地で開き、本当に上手いプロ
をヒーロー扱いし、神輿に担いで一儲けしてやろうという魂胆でした。なぜそんなこ
とをしたかといいますと、当時ナンバーワンと呼ばれた釣り業界の金字塔が年齢を重
ね、10年後にはいい年のオッサンになってしまうため。某メーカーは、オッサンがい
くらすばらしいことをいっても、バス釣りファンの心には響かないことを知っていま
した。若くて、スタイリッシュで、某ナンバーワンと違って従順で、金のニオイがす
る…。そんな人材を集める腹づもりだったようです。

そこで大々的に契約プロとして食わせてやるから、キャストしてみせろ!とやったわ
けです。全国津々浦々のバスプロたちが集まり、殺気立つ会場。その中に混ざる当時
ナンバーワンだった方のファンである中学生、高校生…。参加者を含め、誰もが有名
プロが契約プロの座をつかむだろうと思いながら大会に挑みました。

しかし、結果は大番狂わせ。予選を突破するのは中学生ばかり。バスプロはほぼ皆無。
成績順に並べれば、名も知られていない少年たちが上位を席巻。これに弱った釣具メー
カー。スカウトする計画自体、なかったことにしてしまったわけです。

これが、日本のバスフィッシングのターニングポイントでした。当時、キャストこそ
至上という土壌で育った少年たちは、この瞬間にメインストリームから弾き出される
ことになったのです。極端なことをいえば、キャストなんてどうでもいい。釣具を売
るための神輿、それがすべて。新作ルアーが出ればこれが一番釣れるといい、右ハン
ドルのベイトが売れなくなったら、左ハンドルを使えという。こうして釣具屋の太鼓
持ちとその信者がメインストリームとなりました。釣りという狭い世界では、釣具屋
によるマインドコントロールに気づくこともありません。右を見ても、左を見ても釣
具屋の宣伝だらけですからね。メインストリームから弾き出された人間は某ナンバー
ワンの露出が減ると同時に釣りから離れていきました。日本のバスフィッシングは一
度死んだといってもいいかもしれません。それだけ世代間の毛色が異なるのです。ま
た、歴史や土壌も引き継がれませんでした。

キャスティングなどという人間は古臭い化石とされてしまった今、キャスティングを
教える人はほぼいなくなってしまったのです。「思ったところにルアーを落とせない
のは、使っている道具が悪いからなんだよ。もっと高い道具を買えば、もっと上手く
いくよ」とコントロールした方が、釣具屋としても都合がいいのです。しかし、現実
は違います。

ベイトリールのスプールを上に向けたままオーバーヘッドキャストする人のなんと多
いことか。肩に担いでの背負いキャスト、テンプラキャスト、形ばかりのサイドハン
ドキャスト…。また、右利きなのに左ハンドルのベイトで釣りをするのが「当たり前」
となってから加速度的に増えている、パーミングをしない釣り人。これもなんとも嘆
かわしい。ベイトはキャスト時はワンフィンガー、キャスト後はスリーフィンガーが
基本。これは185センチもある私でも同じなのです。「俺、手が大きいからさー」な
んて言い訳は通用しません。ワンフィンガーでパーミングしたいなら、まずは身長を
300センチくらいまで伸ばしてください。

こんな風にパーミング作業すら知らず、感度がどう、フッキングがどうという。死語
なので通じないかもしれませんが、昔は竿の握りがなってないと、「芸能人持ち」
「トーシロ持ち(素人持ち)」 するなよ!と笑われたものです。ベイトフィネスだか
なんだか知りませんが、フィネス(繊細)なのに、パーミングもないとは。一体全体、
お前はどうしたいんだと思うわけです。

狙ったところにしっかり落とすこと。これが基本にして大原則なのですが、昨今、最
もないがしろにされているテクニックではないかと思います。釣りはキャストで7割が
た決まります。ルアーやカラーの論争は、魚のいる場所へキャストができる前提では
じまるものです。
 
釣り歴が何年なんてものは、ホリデーアングラーであれば何の指標にもなりません。
プロ歴何年であれば話は別ですが。そんな指標より役に立つのがキャストの技術。
キャストが上手い人は釣りが上手い。

あなたは人にキャストを教えられますか?